ブルーなポップと中空ロック

何となしに音楽の話をしています。

Sung Tongs / Animal Collective

音楽情報の収集やミックスリストの活用に疎い私においては、たとえジャンルや界隈を代表するようなアーティストであっても、興味のタイミングの掛け違い一つで触れることなく幾数年、といったことがままある。Animal Collectiveもそういった存在のひとつであった。こうしたセンセーショナルな邂逅がそこら中に埋もれているのを思えば、私もまだそれほど人生を悲観しなくても良いのかもしれない。

 

「Sung Tongs」は、全編に渡りアコースティックギターが主軸になっており、その音やアタック音が打楽器や鳴き声めいたコーラスと相乗して、民族音楽のようなプリミティブな高揚感に溢れているように思う。一方で、曲の構成は、ほぼ単一の通奏や小単位の進行の繰り返しに歪んだ音や声がのっかって展開していくものが多く見られ、ダンスやミニマルな音楽にも似た不思議な陶酔をもたらしてくれるようである。「Leaf House」「Kids On Holiday」「Visiting Friends」はそれらが顕著に感じられ、個人的に特に好きな曲。「Leaf House」はコードがぶつりと切り換っていくのがサンプリングな音楽を思わせとても趣深い。命の歓びを思わせながらまた無機質でもあり、残酷でありながら温かくもある。