ブルーなポップと中空ロック

何となしに音楽の話をしています。

Yard / Slow Pulp

前回のブログでArt-Schoolを話題に出したのがきっかけで、興味はあったが先送りにし続けていた映画「ミスター・ロンリー」を観ることができた。とても興味深い内容ではあったが、また非常に重い内容でもあった。インパーソネーターという題材が宣伝では前面に出ているが、次第に生きることや死ぬことへの問いかけみたいなのが、それを追い抜いてより直接的に表現されていた印象だった。まあそこは自分がその相互のつながりを読み取れていないだけかもしれないけれども…。その問いを補強するかのような寓話めいたパートもなかなかに衝撃的で、頭の整理が難しかった。土曜日の夜というハッピータイムに観たのを少し後悔もしたが、こういった作品を通して人生に向き合うことも大事だし、雑事や享楽に身を投じて人生を忘れることもそれはそれで必要だよね、と、今はそんな心持ちである。

 

下記のリンクは覚書までに。本作ではなく映画「ポンヌフの恋人」に関する記事なのだが、後半でレオス・カラックス監督の苦悩と叶わぬ再会、「ミスター・ロンリー」での巡り合わせについてまとめられており、Art-Schoolの初期の楽曲で監督の手掛けたアレックス三部作へのオマージュ(?)が少なからず見られること、活動再開となるepで同タイトルの曲が作られ収録されたことを思うと、べつに何も関係はないが、何となくしたり顔になれそうである。また、以降の音楽の感想はここまでの話と全く関連しない。

【解説】映画『ポンヌフの恋人』フランス映画史上最大のセットと大ヒットが、レオス・カラックス監督にもたらしたものとは :2ページ目|CINEMORE(シネモア)

 

「Yard」は、ギターの厚めなインディー・ロック~シューゲイザー好きの私にとって、非常にしっくりくるアルバムだった。「Slugs」に代表されるスローな曲群は、キーの低い女声ボーカル、シンプルな8ビートと曲構成、ローファイで籠りがちなギターやドラムの音像と、内省的だがポップでもあるひとつのフォーマットとなっているようで、その中にまたそれぞれのフックやアレンジの魅せ方が盛り込まれているようで趣深い。対照的にボーカルが歌い上げるようなアコースティックな曲「Carina Phone 1000」、パワーポップ然たるアップテンポな曲「Cramps」等も脇を固めている(曲の性質上、この表現は前者の曲に用いるのが適切である気もする)。曲時間が短く分かりやすい点は現代的だが、同時に好事家諸氏のほしいところも詰まっているような、そんな素敵なアルバム。the brilliant greenっぽさもあるし日本人ウケもいいに違いない(適当)。

Slugs

Slugs

  • provided courtesy of iTunes